■営業という仕事について
(山本) 営業の方って、一日のスケジュールがいっぱいある方って多いですが、小幡さん の場合は1日2、3件なんですか?
(小幡) 2、3件ですね。それ以上書ききれないと、縮小印刷して貼り付けたりすること もありますが。
(山本) 小幡さんの場合は、この手帳を使う上で、気をつけていることってありますか? (小幡) あんまり詰め込まないようにしていますね。アポイントでも午後にかためたりし て。半分くらいは事務処理も多いですからそれは事務所でやってます。
(山本) ということは、小幡さんの中で、スケジュールシートに書く前の段階で仕事のプ ライオリティーはある程度決まっているんですね。
(小幡) あまり意識してませんけど、やらなきゃいけない仕事の時間はどこかでとってま すね。一日3時間くらいデスクワークしないと仕事が回らないから、その分を午前と午後 に分ける感じでしています。
(山本) デスクワークにもいろいろあると思いますが、何か基準みたいなものを意識する ことってありますか?
(小幡) 自分がやるべきことなのか、人に頼んでも大丈夫なのかといった基準は重要です ね。オフ会でもそんな話になりましたよね。例えば人から、カタログやサンプルを送って ほしいと頼まれたときになどは、目的としてはお客に物が届けばいいということですので、 そんな仕事は誰がやってもいいんです。
(山本) 自分がしなければいけない仕事か、他人でもできるのか、自分が考えることなの か、それとも他人でも考えられるのかといった、いわばシビアな切り分けって、企業の中 にいると自然に考えますか?
(小幡) 営業って何でもかんでも引き受けてしまいがちなんですよ。でも、自分を通さず にやりとりした方が本当は早いだろうなっていうようなときにには、なるべく人に振るよ うにしてます。
(山本) 例えば、技術的な質問やクレーム処理とか、そういった他に得意な部門が会社の 中にある場合、そうなっていくんでしょうね。それでは、そうやっていろんな仕事を人に 振り分けていった場合、小幡さん自身の中心になってくるものって何なのですか?
(小幡) 簡単に言うと、お金をもうけることを考えることですね。たとえば自分の売り上 げを考えるとか。
(山本) なるほど。
(小幡) 売り上げを挙げる場合、お客さんにたくさん売るようにしなきゃならないですが、 ご承知の通り1日に3件くらいしか回れないんですよ。このあたり(丸の内)は企業が多 いからもうちょっといけますが、弊社は全国規模で展開してますから、そういうときには 1日1件くらいになるわけです。そんなときに、出張前日に1日中外出していると、準備 ができなくなる。
(山本) お客さんと会う前の準備が必要なんですね。
(小幡) 明日持っていくものの中でポイントになることとか、話の筋書きなどを考えます。 そしてクオリティの高い時間を確保するようにするんです。帰ってきた後にも、忘れずに メールを送っておくとか、そういう事後処理の時間も必要ですね。
(山本) なるほど。たくさん会えばいいっていうものではないんですね。
(小幡) 昔は顧客にたくさん会えばいいって考えもあったので、たくさん会ってたことも あります。1日6件ずつ、3、4日行くとその週だけで14~5件会えるんですけど、話 す内容ってそこまでないですよ。お客さんもそんなにしょっちゅう頻繁にこられると困る し。だから、お客さんと過ごす時間をどれだけよくするかという話になるわけです。
(山本) 具体的にはどういった準備をするのですか?
(小幡) 今の仕事で言うと、成果となるものを渡すということか、顧客が困っていること をきちんと持ち帰れるかなんですね。
(山本) お客さんと会って、単に書類を渡したり、新製品を説明するだけではなく、相手のニーズをまず把握して、次の会うときまでにそのニーズに答えられるような提案をする。その繰り返しですね。
(小幡) 私の場合、次は、具体的に何を出しましょうとか、あるいは何か問題があってじ ゃそれを誰々が解決しますが、何かそれについて伝えたいことありますかとか、それはい つまでにくれますかとか、契約をするといったらここまでに契約しなきゃ注文できないん ですよとか、契約は注文前のこの段階でしなければ間に合わないから、その前に契約書の 中身の部分を揃えなければならない、その前に3週間必要ですとか、そういった話を具体 的なものに落とし込んでいかないといけないんですよ。
(山本) なにか大きな締め切りが出てきたりするときに、お客さんと会う件数とが重なってしまってすごくタイトなスケジュールになって失敗した経験はありますか?
(小幡) 失敗というよりもダブルブッキングになりますね。自分の仕事をしなきゃいけな いときと、実際に会うということがぶつかることはありますね。そこは悩みですよね。や っぱり明日の用意のために空けとかないといけないのに、アポイントが入って、それはし ょうがないので明日の準備は少し仕事が終わって社内に残ってやるとか。本来ならその前 の日までにやっておくのが一番いいでしょうが、あんまりできない。
■営業のクオリティをあげることと旅行上手は一緒かも
(山本) 先ほどの話に戻って、準備する時間をきちんと取るっていうのは、どれほど大切 なのですか?
(小幡) やはり準備なしには話は薄くなってしまいますから、クオリティを保つためには、 どうしても必要だと思うんですけどね。
(山本) 小幡さんがおっしゃるように、準備に時間をかけるというのは、いろいろ考えて シュミレーションするということですよね。「考える」というのは、会社の戦略を練るとか、 次のプロジェクトを考えるとかという大きい場面だけとは限らなくて、細かいところでも きっちり考えて準備をしていくことが、仕事の結果や次の仕事につながってきますよね。
(小幡) 旅行の計画も同じことじゃないですか。泊りがけで行くとなると、やはり事前に どこに行こう、どこを回ろうかと調べたりするでしょう。寝る前2時間くらい、その手の 本を読んで心構えをだんだん作っていくと最後にここを考えなきゃいけないな、と。あれ と同じですよ(笑)。
(山本) 充実した旅行のためにはやはり準備が必要であるのと同じように、充実した仕事 をするためには準備をきちっととらないといけない。そのためにスケジュールをあまり詰 め込みすぎるのはよくない。意識的になるべく分散させるようにと小幡さんは心がけられ ているんですね。
(小幡) 僕も、本来はもっとお客さんのもとへ行かなきゃいけないんでしょうけど、そこ は別の方法で穴を埋めなきゃなと思っています。
(山本) 回数ではなく何か別の方法で。
(小幡) クオリティをなるべく上げることでしょうね。しょっちゅう営業に来る人もいる でしょうが、僕の場合は、たまにしか来ないけどちゃんと覚えてもらいたいみたいな。な んせ50社もありますからね、そんな頻繁に回れない。年間休まず行ってもそれぞれ7回 しか回れないことになるってことは、2ヶ月に1回来るか来ないかくらいですよね。
(山本) 次に行くときに何の用事もないけど、お礼だけで行くことはないですよね。
(小幡) ないですね。向こうも迷惑でしょうしね。
(山本) その辺って、割りと古いタイプの営業を引きずっている会社ってまだまだ多いで すよね。営業マンの義理人情が幅をきかせてたりして。そういうタイプの営業って、今後 はなくなっていくと思いますか?
(小幡) 営業の人がちょっと役に立ちそうな人だったら付き合おうかなとか、そのくらい だろうと思いますね。しょっちゅう来てるけど、何言ってもすぐ忘れて「すみません、忘 れてました。また明日持ってきますから」とか言うなら、一回くらいちゃんと準備して来 いよって営業もいますからね。そこは無駄なくしないとね。営業論になってしまいました が。基本は旅行に行く準備。
(山本) ということは、小幡さんは、旅行はわりときっちり立てられるタイプなんですか (笑)。
(小幡) そこまでキチキチにはしないですよ。旅行の中でも自由な時間はとらないといけ ないので。朝起きて、9時にどこに見に行って、10時からはどこに行って、12時昼は どこで食べてって...一個でもずれると大変なことになってしまう。
(山本) 準備とは、なにも細かい段取りを決めるということではないんですよね。営業の 仕事もまったく同じで。
(担当編集者)コンセプトをたてて、シュミレーションをしてみる。
(山本) そう、コンセプトとか優先順位を立てることでしょう。あれもこれもってできな いから、この旅行はこういったものを中心にしようとか、方向性を定めるためには、やは り準備が必要ですよね。大きなストーリーを作るというか。
(小幡) あと、行った先で1、2時間の時間が空いたときは部屋でゆっくりしようって時 間はありますね。仕事でも1、2時間ポコって空くところは常にある。お客さんとのアポ とアポの間が、例えば午前中に会って、次は2時からの予定で、でも会社に戻って慌しく 出るくらいならお客さんとこの近くの喫茶店で1時間いたほうがよかったりする。行った 先で少し余裕がないと、何か起きたときに対応ができないですから。旅行に行って、この 列車のり遅れちゃって台無し、みたいな旅行はいやですからね。
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